不安神経症の部屋
「症状克服の挑戦より、楽しむことや心地よい体験を大切に」 '18.12
Mさん、はじめまして。
電車でパニック発作を起こすようになり体調を崩し会社を退職し、現在もその悩みが続いているということですね。多くの方が、初回のパニック発作では、「このままでは死ぬのではないか」というくらい怖い体験だったと語られます。
パニック発作の原因はまだ未解明な部分がありますが、心身のストレスが蓄積することで、自分の体が「もう無理はしないで」とSOSのサインを出ていると解釈することもできます。パニック発作が起こり始めた当時は、お仕事やプライベート等でストレスが多かったのではないでしょうか。Mさんは退職後、休養することで体調が回復されたので、そこはよかったと思います。
今は予期不安が強く電車に乗れないこと、“挑戦と無理の境界線がわからない”ことが一番の悩みなのですね。ご存知かもしれませんが、パニック発作の多くは、症状を取り除こうと四苦八苦しなければ、5分〜10分前後で大きな波は過ぎ去ります。森田療法の言葉では精神交互作用と表現しますが、パニック発作が起こるか起こらないかに意識を集中していると、より予期不安は増強され発作は起きやすくなるものです。
そこで重要なのは、「電車に乗る」ということを目的としないことです。つまり、電車は移動の手段に過ぎず、友人と会うことや買い物に行くことなど、本来の目的に意識を向けることが大切です。移動手段は電車でなくてもよいかもしれませんし、始めは友人に近くまで来てもらってもよいかもしれません。ちょっと周囲に甘えてみるのも手ですよ。そうする中で、また友人と会いたい、どこかに出かけたいという気持ちが自然に出てくるようでしたら、一駅ずつ降りても良いと思いますので、少しずつ電車にチャレンジされたらよいかと思います。一時的にお薬の力を借りことも方法でしょう。
頑張って克服するという姿勢から一歩離れ、“自分が楽しめること、興味があることに少しずつ手を出す”という意識を大切にされてください。回復を願っています。
(鈴木優一)
「不安や心配は、安心・安全を求める気持ちの証」 '18.11
Iさんは「少しでも体に異常があると、自分や家族が重大な病気なのではないかと不安にかられる」と書かれています。それ以外にも、将来の不安、対人恐怖の疲れ、ガスの元栓や鍵の確認など、様々なことが不安になって苦しまれているようです。それぞれ別の悩みのように見えますが、いずれも「自分や家族の健康」「万全な将来」「嫌われることがない安全な人間関係」「災いにあわない安全な生活」を求めているための悩みと理解できます。つまり、全て共通して「安心・安全」を求めて「そうでなかったらどうしよう…」という不安にさいなまれている、ということではないでしょうか。
言い換えれば、Iさんは全てにおいて不安のない安心な生活を求める気持ちが強いがゆえに、それが損なわれる事態ばかりを想定して、逆に不安を強めてしまっているわけです。悪い状況ばかりを想像し、それをすぐに否定する答えを求めていたら不安がつのるのは自然なことです。
私達は、誰しも安心・安全な生活を求めています。しかし、残念なことに常にそれが保証される生活は不可能でもあります。災害にしても、病気にしても、全てを予想することは出来ません。可能なのは、いつ起こるかわからない災害のために家族内の連絡手段を決めておくとか、防災グッズを揃えておくなど出来る準備を行うことくらいでしょう。病気にしても、少しでも健康に生活できるように規則正しい食生活や適度な運動を心がけることが重要でしょう。対人関係であれば、すぐに相手の気持ちを確認するのではなく、「もし自分だったら・・・」と相手の立場になって考えてみることが、良好な人間関係を築くための気遣いになるはずです。森田先生は、そうした心がけこそが、事実に即した行動だと述べています。
Iさんの悩みは、どれも安心・安全な生活を望む人間としては自然なものです。ただ、そこで生じる不安をすぐに何とかやりくりしようとするために歯車がずれてしまったということですね。本当の意味で、自分が満足する日々を過ごすためにはどうするか?それは、先に述べたように「今」「自分なりに」出来ることを工夫し、そこに力を注ぐことではないでしょうか。そうした姿勢を心がければ、いくつもの悩みが同時に和らいでいくように思います。
(久保田幹子)
「退職後の過ごし方」 '18.10
Kさん、うつ病の発症がありながらも退職までの勤務、お疲れ様でした。退職してストレスがなくなったはずなのに不安が湧いてくる、こういった方は実は多いです。今まで仕事に向いていた関心、エネルギーが自分の身の回りのことに向くので、妙に自分の周囲のことが気になるようになるのです。裏を返せば、不安が生まれるほどまだエネルギーがあるという事です。
退職された方に多い不安は、根本にある将来への不安(老い、病気など)が、様々な形の不安として姿を現すものです。そして不安が一度起こるとそうはならないという確証を得ようとし、かえって不安に注意が向き、自ら不安を探し出してしまうという悪循環に陥ってしまいます。老いや病気を恐れる気持ちは自然な感情ですが、この悪循環によって不安にばかりとらわれる生活となります。
不安が起きてしまった場合、日中の過ごし方に工夫が必要です。もちろん睡眠のためにも日中活動するのは良い事ですが、せっかくの退職後の生活です。実家のことやお母様の事は心配ではありますが、自分の楽しみの時間を作ってください。退職前に、「退職したらこんなことがやりたいな」と思われたことはないですか?もちろんうつ病の状態にもよりますが、それを思い出してやってみるとよいかもしれません。
また仕事を辞めると社会と離された気持ちになり孤独を感じるとおっしゃる方が多くいます。孤独になると悶々と考え込む機会も多くなります。例えば地域の歩く会やカルチャースクールなどに行くと同じように実家の事やお母様の事で悩みを抱えている方がいると思います。そういった同じ悩みを抱えた方との話はとても役立つことがありますので足を運んでみるとよいかもしれません。
最後に眠れないと不安になり、眠剤を自己判断で増やして飲んでしまうとのこと、これはやはり避けた方が良いでしょう。特にKさんのようにうつ状態になったことがある方は、うつ状態からも不眠の症状は起きます。むしろ抗うつ剤の調整によって不眠が改善したという方もいます。また眠剤を増やしすぎると、依存性の問題や筋肉が弛んで転びやすくなることも起こります。一度主治医に相談してみましょう。
(大久保菜奈子)
「このくらいできないと?」 '18.9
Oさんは、パニック症に15年間、そして今は同時に自律神経失調症、心気症にも悩まされているとのことです。
最初のパニック発作が起きた頃のことについて、ご自身は「既婚者なら当たり前にあることにストレスを感じていた」と書かれていますが、その上に失明の危機を感じるような病気を患ったり、弱っている時にインフルエンザでつらい思いをしたらどうでしょう。「それは大変!」と思いました。
Oさんは不安があると何も手がつかなくなると書いておられます。これは病気についての不安が出た時でしょうか。心気症のように繰り返し病気を心配する時にそのように「手につかない状態」になるのをよく聞きます。今はそうなったときにどうされていますか?
何度も病院にかかって、そこまで心配しなくていいと言われているのに、そんな風に病気のことが不安になる自分を情けなく思ったり、このくらい自分で対応しないと、と思っていないでしょうか。書き込みの中から、Oさんの中にちょっと完全主義的なところがあるかなと思ったのですが、いかがでしょうか。
パニック症も心気症も、自分で自分をしっかり律しよう、このくらいしっかりできなくてはダメだという気持ちが強ければ強いほど高まる病気のように思います。
もし当てはまるところがあるようでしたら、大事なことはまず第一に、自分の完全主義を知ることです。
完全主義は、素晴らしいものですが、行き過ぎると、自分のできていることや、自分がどんな状態にあっても受け入れてくれている人たちがいる事実が目に入らないことがあります。賢くて色々こなせているのに、自分の思いに引きずられて、現実を見るのが苦手になってしまっている状態と言えるかもしれません。自分の好きなことや心地よいことをして自分をいたわることもとても大切です。
そして第二に、揺れ動く自分を許せるようになること—自分の心の器を広げていけるようになることが目標です。先のことを心配すればするほど、不安は募ります。「手につかなくなったとき」しばらくして観念から解放され、やるべきことに手をつけられるようならまずはそれで充分です。
今パニック症以外にも悩みが増えている背後には、年齢に伴う身体の変化や、お子さんも大きくなっていらしている中で何に今後力を注いでいったらよいかという問題もはらんでいるかもしれません。また様子を聞かせてください。
(今村祐子)
「不安との付き合い方」 '18.8
Mさんは10年前に動悸と胸の痛みの症状でパニック障害と診断され、半年間の服薬で症状は改善されたものの、その後も何度か体の不調が現れ、受診するたび恐怖を感じ、ひどい病気になるのではないかと不安と恐怖を感じていたとのことです。半年間治療したものの不安は改善されず、動悸も出てきたとのことで困っています。
「ひどい病気になるのではないか」と不安を感じているとのことですが、パニック障害の方で、身体の症状が出る度に「またパニック発作が出るのではないか」とビクビクする方がいます。しかしそれは症状を怖れて身体に注意を向けることで身体の些細な変化にも敏感になっていて、見方によっては自らが発作の準備をしてしまっているとも言えます。
不安などなければ良いと思いますが、不安というものは人が生きていくうえで大事な感覚で、生きたい気持ちが強い人や、完全な身体状態で過ごしたいと思う人ほど、不安は高まっていくものです。
頭の中だけでやりくりしようとしてダメであれば、出来ることであるが症状のためにやらないでいることを(ハードルは低いことでも良いので)恐る恐るやってみることからはじめてみて下さい。何でも難しい、無理と感じてしまいますが、当然出来ることは出来ますし、出来ないことは出来ないものです。出来ることをやっていくなかで、少しずつでも生活が広がっていけばしめたものです。頑張って下さい。
(矢野勝治)
「症状に振り回されずに生活を整える」 '18.7
Hさんはご両親と同居されたことをきっかけに不安障害を発症され、毎日が不安と恐怖感で落ち着かず、食欲もなくなり眠れない日々が続きました。この2年で少しずつ落ち着き、何とか日々を過ごせるようになってきましたが、また今、症状が悪化してしまったとのことです。不安感や食欲低下、不眠などが続いているのは辛いですよね。その中で、この2年間、よく頑張ってこられましたね。
具体的なことは分かりませんが、不安が強くなるときというのは、欲求が強くなったとき、とも言えます。例えば、新しい環境になったときに「前と同じように生活したい、勉強したい、仕事したい、よりよく生活していきたい」などの欲求があるからこそ、「ちゃんとやっていけるだろうか」と不安になる、といったようにです。
Mさんは最近再び、不安などが強くなったということですが、何かきっかけがあったのでしょうか。何か変化があったのであれば、おそらくは欲求・不安ともに強くなったのではないでしょうか。そうだとすれば、今いる環境・境遇に慣れる、という時間薬が必要なのでしょう。時間薬というのは、言い換えれば、時間を味方につけるということですが、変化に慣れてくるまでにはどうしても時間が必要です。そして、その時間をどう使うか、という点が最も大切だと思います。
Hさんは今、どんな生活をしているでしょうか。不安に振り回されて、そのことばかりを考えて、何も手がつかないでいるのだとすれば、それは、先々の不安を頭でどうにかしようとして、悪循環になり、ますます不安が強くなってしまいます。どんなときも、気分に流されずに「なすべきことをなす」というのが、不安に振り回されずに生活を整えていくコツです。Hさんが今の生活を少しでも充実できそうなことはどんなことでしょうか。あるいは、ちょっとでも、とりあえずでも、出来そうなことはどんなことでしょうか。ちょっとでも、動いていくことが悪循環から抜け出すきっかけになると思います。ぜひ、実践してみてくださいね。応援しています。
(谷井一夫)
「自律神経を鍛えるとは」 '18.6
こんにちは、Aさん、頻発する不安発作の中でのご苦労をお察しします。
火のない所に煙は立たぬという諺のように、不安発作は一般的にストレスから来る慢性的な緊張や心理的疲労がなければ、引き起こされません。そのため、不安発作自体の対応もさることながら、根本的には疲労をためがちが行動スタイルを見直すことが重要となります。例えば、相手にNoと言えないばかりに、様々な仕事を一人で抱え込む特徴のある方などは、緊張や疲労を過度に募らせやすいものです。この点は、いずれAさんも振り返り、様々な手立てを模索する時期がやってくると思います。
しかし、私はAさんが森田療法の感情の法則を道標に、不安発作を持ち堪えながら生き抜いている姿にいたく感心しました。不安という感情が弓なりに軽減するまで持ち堪えるという取り組みは、一口で言えば簡単ですが、中々骨の折れる作業です。しかし、このような体験が醸成されているとすれば、Aさんには潜在的な粘り強さがあるのだと思います。そして、その粘り強さが抗不安薬の離脱症状に対する取り組みにもまた生きていると感じます。
離脱症状の場合、様々な不定愁訴が患者さんを悩ませます。巷ではシャンビリなどと例えられる皮膚感覚異常や耳鳴りなどが代表的でしょう。ただ、自律神経症状は不安と同じように意志の力ではコントロール出来ません。そうだとすれば、自律神経症状を軟化させる取り組みは、生活を整えながら体力増進のための粘り強い取り組み如何にかかってきます。何故なら、内服の終了に至った患者さんの多くは、不安の大きさに関わらず、体力のある持ち主だったからです。別な言い方をすれば、体調を向上させる取り組みが、自律神経を鍛え、不安などを抱える「あるがまま」の姿勢を養っていると捉えてもいいでしょう。
Aさんの体質は冷え性でしょうか? もし冷え性であれば体は緊張しやすいですから、不安発作や離脱症状を引き起こしやすくなります。冷えに陥らない対策から自身の心身を労わる事も一考に値すると思います。その上で、上述のような自身のストレスに際して陥りがちなスタイルを見直すことにつなげて頂ければと思います。お大事になさってください。
(樋之口潤一郎)
「心配性を通り越した不安」 '18.5
Mさんは「心配性を通り越した不安が襲い心身共に疲れて最近は食欲もなく不眠が続き人と話せば涙が溢れ不安である事が不安になってしまいました。 」と書き込んでおられます。「昨年家族の問題で色々ありその時は不安ながら頑張らないといけないと自分を追い込んでしっかりしたフリをしていましたが限界が来て壊れてしまいました。」とのこと。家族のために頑張ってこられた分、綻びが生じたと感じた時、悲しみやもしかしたら「今までの頑張りはなんだったのだろう」というむなしさのようなものも感じられたのかもしれませんね。
「でも何とか自分のために這い上がり恐怖や不安を乗り越えたい!勇気が欲しいです。」と書き込まれている時点で、勇気を持っておられるのではないでしょうか。今はご自身を追い込む方向に向いてしまっているエネルギーを、できることから少しずつ動きに向けていきましょう。
結果的にはご自身を追い込むことになってしまったとはいえ、ご家族のために不安ながらも頑張ってきたということは、大切な事実です。そのことは、望んでおられる「勇気」を支えてくれるはずです。やってきたことを生かしつつ、少しずつ動いてみましょう。このときに、あまり生活とかけ離れた新しいことをするというよりも、今の生活に少しプラスしてみる、位の感じがいいでしょう。家族のためにと頑張ってきたMさんですので、お友達の好きなものを買いに行く、などの目的もいいかもしれません(自分、家族以外の人に喜ばれること、役に立つこと)。そして恐る恐る外に出た時に、お友達の顔を思い浮かべながら「こっちがいいかしら」と品物選びに悩んだり、「私もこういうことが好きだったな」と思い出せたら、きっと次につながることでしょう。ぜひ人付き合いもしたい、出かけたい、という「本心」を大切にしてください。
最後に、Mさんはパーキンソン病という身体の病気も持っておられるとのこと、病院の先生ともよく相談しながら進めてみてください。
(塩路理恵子)
「周りへ相談する」 '18.4
Hさん、うつ状態を繰り返してさぞお辛いと察します。4月から新しい職場で不安も募っていると思います。
うつ状態を繰り返す方の中に、性格的には内向的・神経質といった弱い面と几帳面・完全主義といった森田神経質傾向をお持ちの方がおります。この性格自体は別に病的ではないのですが、うつの自然回復を阻害したりする場合があります。また、自らに完璧主義を通し、他者へも完璧主義を要求し、あまり他人へ頼ることができない方がいらっしゃいます。Hさんはいかがでしょうか?的外れでしたらごめんなさい。
新しい職場で仕事内容も手探りでしょうし、周りのスタッフも知らない方ばかりですよね?程度問題かもしれませんが、「最初なので、すみません」と前置きをして、素直に「わからないこと」を自ら聞いてみてはいかがでしょうか?つまり「周りからのサポート」を期待する受け身的な姿勢でなくメッセージを発信することが大事と感じます。「業務量」についてはこれも具体的にご相談していくのが良いと思います。
また、うつになりそうな症状はありませんでしょうか?もし気分が落ち込む前に、肩こり頭痛といった体の症状が出る方がいらっしゃいます。あるいは眠れないことからうつになる方もおります。Hさんはいかがですか?もし周りの理解を必要なことと言えばこの段階で早めに定時上がりにする、あるいは有給休暇を使って事前に休みをとることが大事ではないかと思います。
新しい職場での周りへの頼り方、うつになる前の初期段階での早めの対応を胸にお仕事を継続されていって下さい。
(舘野歩)
「攻めの“休養”も時に必要かもしれません」 '18.3
Kさんは仕事での不安感が高まる中、常に緊張してしまい、日々の生活においても楽しい嬉しいという感覚がなくなってしまっており、とても辛い状況であるとお察しします。
Kさんの不安感は、今まで生きてきた中で何度も経験されたことがある不安感でしょうか?もし今まで経験がない程度に不安感が強く、仕事のパフォーマンスが落ちている、不眠や食欲減退、普段楽しめたことが楽しめない等の症状が目立つようでしたら、一度メンタルクリニックや心療内科への受診をお勧めします。というのも、心身のバランスが著しく崩れると、無理をして仕事に行っても集中力が欠けミスが増える、そのため自信を失いさらに落ち込むといった悪循環に陥ってしまうことがあるからです。そういった場合は、まず休養が第一です。これはけしてあきらめではありません。次の一歩を踏み出すための攻めの“休養”であります。
私が推察するに、Kさんは責任感が強く、仕事熱心なのではないでしょうか。その性格はとても良い面と思います。しかし現代社会では、仕事熱心な人に業務が集中し、オーバーワークを強いられることがしばしばあります。全てを受け入れていては体調を崩すこともあるでしょう。
今の状況はKさんにとって、“かくあるべし”と“あるがまま”の違いを見つめ直すよい契機かもしれません。少し立ち止まって、深呼吸をしましょう。人生余白も大切です。
心身のバランスが取れるようになれば、再びKさんの良さが発揮されるでしょう。一人で行き詰まったら、ここでご相談されたように、かかりつけの医師に自分の気持ちを正直にお伝えください。もし、かかりつけの医師が精神科医や心療内科医でなければ、メンタル専門の医師に紹介状を書いてもらうのも方法と思います。Kさんの回復とご健勝を願っています。
(鈴木優一)
「身体に任せてみる」 '18.2
Wさんは吐くことがとても怖く、食事中、特に外食中に気分が悪くなったり食欲がなくなるということでした。吐いたらどうしよう、お腹が痛くなったらどうしようと考えると食べることが苦痛で、他にも喉につまったらどうしよう、胸痛・動悸や寒気などの症状が出たらどうしよう・・・毎回30分くらいでおさまるが、今回は治まらなかったら・・・などと不安で歯医者や美容院にも行けなくなったと書かれています。確かに体調不良は不快ですし辛い状況だと思います。
実際、色々な体調の異変は出ているのだと思いますが、Wさんが一番恐れているのはどんなことなのでしょう?体調不良になることも当然不安だと思いますが、そうした時に対処できないのではないか、人前でみっともない、などと考えて、異変が出る前からあれこれ想像して不安をあおってしまっているのかもしれません。Wさんの書き込みを見ても「〜たらどうしよう」のフレーズがとても多いように感じます。
森田は、「電車で窓際に立っている人が、本人は自分で気がつかないけれどもその眼球は絶えずピクピクと動いている。これは無意識のうちに、外界の変化に調和活動しているので、すなわち刺激に対してそのままになりきっているのであるから、本人は何の不快苦痛も感じない。これに反して電車に酔うような人は、外界の刺激に対して、あるいは目をつぶったり、心を落ち着けたりしようとするから、ますます気分が悪くなるのである」と述べています。つまり、私達の身体は、色々な刺激に対して自ずと調和するように出来ているので「抗わずに、そのまま任せる・・」と伝えているわけですね。飲み込むときに意識して飲み込んでいる人はあまりいないでしょうし、吐いてしまうときは、身体が食べ物を外に出す必要がある時とも言えます。身体は、私達が考えている以上に刺激に対して順応性があるものなのです。
これまで大体30分くらいで症状がおさまるのであれば、そうした経験を拠り所にして、自分の身体の調整力に任せてみたらどうでしょうか。ただ、その最中にも身体の変化ばかりに注意を向けていれば、先の森田の例のように不調和を生むことになってしまいます。折角の食事であれば、それがどんな味なのか、どんな材料を使って、どんな調理をしているのか、会食であれば友人との会話など、目の前の刺激や状況に注意を向けてみましょう。今のように身体を疑い、症状が出るのではないかと身構えていたら、まるで症状が出ることをあえて待っているかのようですよね。同じ時間を過ごすのであれば、自分の身体だけでなく、周囲に目を向けて、観察するようにしてみましょう。新しい発見があるかもしれませんよ。
(久保田幹子)
「身体の症状はあってもできることはたくさんある」 '18.1
Mさんのコメントを拝読いたしました。上司から異動を命じられ、その際「評判がよくない」と言われたとのことで、本当にショックだったと推察します。特に一生懸命仕事に打ち込んでいる方こそ衝撃が大きいのではないでしょうか?落胆と同時に悲しみ、さらには怒りなど様々なことを感じたことと思います。コメントからはMさんの真面目な人柄が感じられます。「作業環境は変わっておらず」と書かれているように、自分の周囲の環境は自分の力では変えることができません。しかし環境に対する姿勢は自分の力で変えることができます。
まず「人からの評価が気になる」とのことですが、Mさんが上司から言われたことを考えると自然なことです。一方で上司は「違う部門で違う作業に期待します」とも言っています。上司としてはある仕事が部下に向かないなと思えば、別の仕事をやらせてみようと思うわけです。仕事には向き不向きは確かにあり、自分の向いている仕事を一生懸命できればよいのではないかと考えます。今の仕事がMさんに向いているかどうかは文章だけではわかりませんが、異動を「新しい環境で期待された証拠」と捉え今までの経験を生かしお仕事を続けてみてください。
次に痛みやしびれについてですが、Mさんの生き方がやや内向きになっている現れのような気がします。もちろん痛みやしびれはあるのは事実ですが、外への興味が薄れていくと益々自分の身体へ注意が集中し、さらに痛みやしびれが増していくという悪循環があります。以前担当した原因不明の身体症状を持つ患者さんが「動いていると身体の症状が良い」「身体の症状はあってもできることはたくさんあった」とおっしゃっていました。不快なものは取り除こうとすればするほど付きまとってくるものです。不快な症状があってもできることはたくさんあります。また、身体の不調はあっても、「これから何をしたいのだろうか?」「どう生きていこうか?」など自分の心の内にある欲求に問いかけてください。もしかすると仕事だけにご自身の人生の比重が偏りすぎていた可能性もあります。仕事、仕事以外においても自分がどうしていきたいか心の声を聴いてみて、過ごしていってください。
(大久保菜奈子)