不安神経症の部屋

「自分の限界を決めず、やりたいことに挑戦してみましょう」 '15.12 

Lさんは、20歳半ばで不安症になられたとのこと、今は42歳と言う事ですので不安症との付き合いも長いですね。時には薬を使いながらやり過ごされたとの事、20年の期間で不安症との付き合い方が上手くなられたのだと思います。妊娠・出産と言う大変な時期も乗り越えられたとのことですので、不安症の付き合い方はもうベテランだと思います。

まず20年間を振り返ってみて、どのようにしてつらい時期を乗り越えられたのでしょうか?つらい時期に自分がどのように行動していたのかを思い出してみると、同じような困難な状況に立たされた時の参考となります。

不安があると、つい自分の行動を制限しがちです。書かれていたように電車や1人で遠出する事を避けるようになります。不安そのものより、この回避が問題です。人は不安により行動を回避すると、益々その行動への不安が高まります。不安を持ちながら恐る恐る一歩踏み出し、ご自身のやりたいことに挑戦してみてください。お子さんもまだ小さいのかもしれず大変な時期かもしれませんが、自分のために使う時間を確保してください。

あとはご自身がこれからどう生きていきたいかですね。電車に乗って何かしたい事はありますか?遠出できたらどこに行きたいですか?自分の願望と向き合って一つずつやりたいことをやっていって下さい。42歳とまだお若いので恐怖と共にいろいろな場所に行き、いろいろなものを見てきて下さい。人生の幅も広がりますし、自分の限界も知らず知らずのうちになくなってきますよ。
(石山菜奈子)

「薬をめぐる悩み」 '15.11 

Yさんがお薬をめぐる悩みについて書かれています。依存的になるのが怖い反面、飲んでいると安心感がある。不安障害で、こういう気持ちを持つ方は少なくないと思います。
Yさんは主治医の先生と相談してみるとのこと。Yさんの性格もあるかもしれませんが、主治医の先生と相談してみようと思える関係を築かれているのがいいですね。

薬を飲む中で、薬を飲むことへの葛藤があればあるほど、薬を飲んだか飲まないかで、一喜一憂したり、自分の状態を評価するようになることがあります。飲んでいるからダメだとか、だから一回自分で止めてみようなど。特に完全主義的な人に多いかもしれません。気持ちとしてはわかるのですが、そうすると、自分を叩くばかりになってしまって、元々薬を飲み始めた時に夢見ていた自分の生活の向上という目的からずれてしまうことがあります。

身体の状態はYさんが書かれているように、天気によっても違いますし、突然具合が悪くなることもありますよね。すっきり爽快になるのがなかなか難しいものでもあります。

Yさんが安定剤を飲まれるに至った詳細はわかりませんが、体調を整え、気持ちを整えたいという思いの裏には、体調が整ったら、こうしたいという願いがあったのではないかと思います。「主婦の仕事もままならず、それに悩んでいる」と書かれているので、家事や家の采配にまつわることをもう少し思うようにやりたいという思いがあるのでしょうか。「ままならず」ということは、自分が思うようではないけれど、やっていらっしゃることはあるということでしょうか。

体調不良や不眠により自分の行動に満足が行かない時、
(1)具合の悪いのが気になるのと苦しいので、なかなか実際の作業に手がつかず、結果として自信をなくしている場合と、
(2)実際は具合の悪い中で最大限やっているのに「普通だったらもっとできるのに」と思って、「普通」との比較で自信をなくしている場合と両方あるように思います。

Yさんはこのどちらかに当てはまりそうですか?2つが混じっている場合もあると思います。ご家族や、状況をよく知っている周りの方がいたらその方にも聞いてみてください。
(1)の方がより強ければ、すっかり良くなるのを待つのではなく、やれることから手をつけてみることで、意外な広がりが出てくるかもしれません。具合が悪いときは具合が悪いなりに、良いときは良いなりに、どのくらいならできるかを自分でつかんでいく訓練にもなります。
(2)の方であれば、今自分が行っている判断が自分の元気をなくさせているので、なぜ自分はこんなに「普通」にこだわるのかということをちょっと眺めてみましょう。
(今村祐子)

「不安・動悸・めまい」 '15.10 

Aさんは(夏のある夜に突然動悸やめまいが出現した)とのことです。大変驚かれたことでしょう。Nさんも書かれていますが、そのような症状が生じる時には何かしらの環境要因や契機がある場合があります。Aさんは受験勉強でしょうか?夏のはじまりで蒸し暑い夜であったかもしれません。
救急病院に行かれたとのことですが、その後「森田療法に出会った」ことから、身体的には大丈夫だったと推察します。今は「随分とまし」になったとのことで、先日には「不安になり動悸がした時も慌てず対処することが出来た」とのことです。今後、時に強い症状に襲われることがあるかもしれませんが、またそうなるのではないかと構えすぎないことです。
最近では湿疹について気にされているようですが、不安障害と直接的な関係はないと考えます(広がったり、続くようであれば、皮膚科を受診するのも一案かもしれません)。
まずは目の前の目標である受験に向けて頑張って下さい。
(矢野勝治)

「病気への不安の裏にある欲求に目を向ける」 '15.9 

Cさんは現在育児休暇中で、潰瘍性大腸炎の治療中ではありますが、それ以外の検査では大きな病気はないとのことです。しかし、「癌ではないか。今、心臓が止まってしまったら…」といった病気に対する不安で「子供の将来の成長をちゃんと見られるか」と心配になっておられます。
 病気への不安の中、育児を頑張っていらっしゃいますね。育児というものは正解がないだけに、毎日不安になりますよね。その中で、「ちゃんと育児をしてあげなきゃ」「将来、子供の成長をみたい」という気持ちが強くなれば、「今、自分がここで病気になるわけにはいかない」という考えになり、余計に自分の体に注意が向いてしまうのも無理はないでしょう。

もちろんお子様の将来のことは大切でしょう。しかし、その将来のためにも今、一番大切なことは、目の前にいるお子様に力を注ぐことだと思います。Cさんの「病気への不安」の裏には「健康でありたい」「ちゃんと育児をしたい」「子供の成長をみたい」などのとても自然な欲求があるように思います。それらの欲求の裏返しとしての「病気への不安」であるならば、その不安は持ったままで良いのです。Oさんもおっしゃられていましたが、将来の病気の心配で今出来ることをおろそかにしてしまうことはもったいないですよね。不安なまま、ビクビクしながらで構いません。Cさんが今大切に思っていることに力を注いで行きましょう。
(谷井一夫)

「入院森田療法の意義について」 '15.8 

Tさんはパニック障害と診断され、薬物療法を受けておられるようですね。そんな最中、状態が悪化し、退職せざるを得なくなってしまったことは、Tさんにとって一番無念であったと察します。

ところで、そんな中であっても、Tさんは回復を求め、入院森田療法を考えるようになりました。生活に行き詰り、自宅だけでは回復の目途が得られない場合には、入院治療は一考に値すると思われます。そのため、入院治療について私の経験から幾つかお話できればと思います。ちなみに入院森田療法を行っている施設は少なく、現時点では慈恵医大森田療法センター、三島森田病院、浜松医大精神科などの三施設に留まっています。その中で、私は10数年、慈恵医大森田療法センターに勤務していたため、慈恵医大の入院形態を踏まえ、ご説明させていただきます。

まず、入院の際、慈恵医大第三病院精神神経科の外来を受診していただきます。そこで、森田療法を希望された患者さんが、本当に森田療法の適応であるか否かを専門の医師が判断し、その上で初めて入院の是非が決まることを予めご了承いただければと思います。というのも、森田療法に対する治療意欲が非常に高くても、統合失調症の患者さんなどはその病態から適応とならないからです。
入院期間は大凡3か月程度ですが、期間については主治医とよく相談していただければと思います。治療の手順は本である程度ご存知かもしれませんが、標準的には臥褥期→軽作業期→作業期→社会復帰期の順番で進行していきます。臥褥期では、1週間、半閉鎖的な部屋で臥床していただきます。すでに、この時点から「不安の中でも臥床という必要な姿勢をとる」という意味において、森田療法が始まっています。臥褥後半では退屈感から一般的には「早く外に出たい」と活動欲求が高まるようです。軽作業期では、気分に流されず、目の前の図画工作などに打ち込んでいく姿勢が求められます。この時期は、作業期への慣らし期間に相当します。作業期(約二か月)になると他の患者さんと共に様々な作業に取り組んでいくこととなります。慈恵医大森田療法センターでは、患者さんたちが、清掃など生活を維持する係り、植物を栽培する係り、そして動物を飼育する係りなどの三つの分野に分かれ、作業に取り組んでいきます。社会復帰期(一カ月以内)は、退院後の準備期間に相当します。そこでは、自宅への試験外泊などをして、どのように退院を迎えるかについて話し合われます。

入院期間、患者さんは必ず症状の中で作業することが求められます。不安があるからと言って、生き物の世話をしなければ、植物などは枯れてしまいます。そのため、患者さんは、常に実生活に目を向けていく姿勢を意識していかなくてはなりません。しかし、それこそ森田療法でいう「症状本位の打破」であって、治療の要と言えるでしょう。Tさんの場合であれば、「発作が起こったらどうしよう」という予期不安で必要な作業などを避けないことが、大切な治療目標になると思います。当然、厳しい治療なのですが、不安を避けずに色々な作業に関わっていくと、自分の手がけた植物に花が咲くなど、入院でしか得られない嬉しい体験に遭遇することがいくつもあります。それこそ、患者さんはこの喜びをバネにさらに作業に邁進していくこととなります。そして、この姿勢が、不安の中であっても生活を広げる原動力となるのです。
上記の内容はあくまで一例にすぎませんが、是非参考にしていただければ幸いです。Tさんのパニック障害が回復し、より良い生活が送れることを祈願しております。
(樋之口潤一郎)

「次々起こる病気の不安」 '15.7 

Aさんは、「自分の身体の不調が気になり、いくつも医者にかかっても納得できず、病気のことばかり考えてしまい、本当に苦しいです。」と、身体の不調への不安の苦しさを書き込まれています。

病気の不安に圧倒される日々は、「子供達のお世話も後回しにし、病気のことばかりを考え苦しかったです。」とのこと。やりたい、望んでいることができない、苦しい日々だったことと拝察します。
不安との関わりに関して、森田先生は「一波をもって一波を消さんと欲す、千波万漂交々おこる」という言葉を紹介しています。子供のころ、池や湖に石を飛ばして遊んだ方もたくさんいらっしゃると思いますが、水面にできた波を消そうとして、そこに石を投げ込むと、更に波が広がってしまいますね。このとき、波を静めるのに最も早い方法は、石を投げ込むのをやめて、「待つ」ことです。

「病院を何ヶ所もかかる」というのは、この場合の石を投げ込むような行動になってしまっていたかもしれません。安心のためにしているはずの行動が逆に不安を強めることになってしまうのです。
また一般に不安から「体調が悪くならないように」と生活を狭めることで、かえって心身のバランス、心身と活動の調和が乱れてしまうことが起こりやすくなります。
病気への恐れ、とらわれの背後には「健康でより良い生活を送りたい」という「生の欲望」があるもの。 もう一度、「病気を恐れる不安」の裏にある、ご自身の望みを問いかけてみましょう。
現在緑内障という病気をわずらっていらっしゃるとのこと。病気のことや今後のこと、とても不安になりますね。

不安があるからこそ、眼科の先生の診察をきちんと定期的に受けて、点眼が必要であればきちんと行なうなど、現実的な対処に神経質を生かしましょう。このとき、現実的に対処をすることと、「もしも」という不安を分けておくことも大切です。

人が生きる上で「病気を怖がってはいけない」というのは無理なこと。怖い、という気持ちは抱えつつ、恐る恐る今できること=必要なケアと、日々の生活やお子さんのお世話に手をつけていくことで、心身、そして行動・生活との調和をめざしていきましょう。
(塩路理恵子)

「神経質をよりよく生かす」 '15.6 

Sさん、仕事で一度ミスをしてしまい、またミスをしてしまうのではないかとの予期不安で気が滅入りさぞかしお辛いと思います。自分が仕事のできない人間であることやかつての失敗も思い出されているとのこと、苦しいですね。抗不安薬で少しらくになり良かったですね。しかし抗不安薬で不安を和らげられても不安を完全に消すことはできません。あくまで抗不安薬は不安を和らげる補助的な役割と心得ておくことが大事です。

一度ミスをしてしまいと言ってもご自身がお書きになっているようにその内容はそんなに致命的なことではないわけですよね?小さなミスを過大にとらえているのはまさにそのことにばかり注意と感覚が悪循環を起こしていて問題を大きくとらえてしまっているのではないかと思います。これが森田の言う「精神交互作用」です。また「仕事で万全を期したくて完璧を求める理想」と「今の自分・現実」とのギャップに悩む「思想の矛盾」と呼ばれる機制があるように見えました。その失敗の事をもう少し距離を置いて見てみると自分で思っていたほど大きなことではないのではないでしょうか。
一回起きてしまった過去を変えることはできません。これを事実として認めた上で今とこれからがあると思います。過去の失敗をまるごと認めた上でこれから失敗しないよう注意を払いつつ、本来の仕事を遂行していくことが大事と考えました。このように適切なところに配慮し、本来のことを行う、これが元来持っている神経質性格をよりよく生かす(神経質性格の陶冶・とうや)ということに他なりません。

神経質性格には強い面と弱い面両方あります。この性格は別に悪いものではありません。ただこの性格を基盤に症状へ「とらわれ」てしまうことが問題なのです。ですから全く別の性格になる必要は全くなく、自分の性格の良い面を現実生活(具体的には仕事など)で生かしていくことが大事と考えます。 こう書くと、「自信がありません」とおっしゃるかもしれません。自信は最初からある人はそうそういません。自信がないながらもいろいろ手を出し、「達成できた」感覚の積み重ねが自信へつながって行きます。最初は「おそるおそる」で良いです。このアドバイスを参考に仕事へ行ってみてください。
(舘野歩)

「仕事と身体とのバランスを考えて」 '15.5 

子作りのための減薬、てんかんの手術、介護職のフルタイム勤務、どれをとっても大変なことです。ここまでよく乗り越えられてこられましたね。現在、気持ちが落ち込まれるのもごく自然のように思えます。
まずは子どもが欲しいのに諦めざるを得ない、これは本当につらいことですよね。努力して何とかなることならよいのですが、子づくりばかりは努力の範疇外です。ご主人とはそのつらさについてよく話し合われましたか?米国では不妊カップルや子どもができなかったカップルがセラピーを受けることがよくあります。(残念ながら日本では一般的ではありませんが、行っている所もあります)それだけ子どもを諦めるという事は大きなことなのです。子づくりを諦めた後、夫婦がどのように進んでいくのか、例えば2人の生活を充実させていく、または養子を選択するカップルもいます。ボランティアという形で子どもと関わったり、親戚の子と関わるなどしているカップルもいます。そこをご主人ともう一度話し合うことは大切な事かと思います。 

Cさんは義母さんとも同居されているようですので、夫婦の時間は少なくなりがちだと思われます。そのため、なおさら夫婦だけで出掛けるなど2人の時間を作って下さい。
次に、てんかんの手術のことです。手術後の体調は大丈夫でしょうか?どのような手術であっても、人間の身体にはかなり負担になっているものです。てんかんの手術であれば、かなり大きな手術であったと推察します。その中で、介護職でいきなりフルタイムの勤務は正直厳しいのではと感じました。現在、介護の現場はかなり過酷と聞きます。若者すら、激務に疲れきっています。「働きたい」という気持ちは素晴らしいことですが、仕事と身体とのバランスを考えた方がよいかと思います。忙し過ぎると心を失います。社会との繋がりのために働き始めたのが、仕事だけに追われ、社会との繋がりどころではなくなっていませんか?今は働き方もいろいろあります。フルタイムにこだわらず、パートタイム、またはまずボランティアから始めるのも手かと思います。人員不足で周りに悪いと思われるかもしれませんが、Cさんの状態が心配ですので、しっかりと上司に相談しましょう。働き方を変えると体調もよくなり、うつ状態も回復するかもしれません。うつ状態が回復したら、昔好きだったことや、かつてやりたかったことを思い出して、仕事以外の趣味などで社会との繋がりを求めてもよいかもしれませんね。
(石山菜奈子)

「過呼吸の苦しみ」 '15.4 

不安神経症の部屋は日記を書かれている方も多く、参加者同士のやり取りも盛んで、その中で参加されている方が少しずつ変化されていっていることが感じられる、体験フォーラムの良さが特に実感できる空間ですね。

Kさんは34年間の神経症を抱えて、過呼吸に苦しまれてきたとのことです。お父さんの暴力による影響が大きかったとのこと。それは本当に筆舌に尽くしがたい大変なことだったと思います。その中で、ご自身で工夫されながら、今独立して生活を営まれていることに尊敬の念を抱きます。そして、森田療法に出会い、自分が良いかなと感じられたことに手を付けて、淡々と行われていっていることに対しても。

6,7日目の日記のやり取りの中でMOさんがとても大切なことをおっしゃっていると感じたので、そのことを取り上げてみたいと思います。
Kさんが下の住人さんからのお誘いを「罪悪感を持たずに断れるようになりたい」とおっしゃっていた後のやり取りのです。やり取りを読みながら、Kさんはお誘いを断ると何が気詰まりなのかな、もし断ると相手がどのように感じると思うのかな、どのように反応すると思うのかな…ということを伺ってみたくなりました。他のことでも、例えば、お父さんの家で夜中に物音を立てたらお父さんがどう反応すると思うのか、長いと思いながら妹さんとお電話されているとき、それでもなかなか切りにくい感じがあるのか、もしそうだとしたらなぜ切りにくいのかなども気になります。

というのは、暴力にさらされてなくてもあることですが、特にさらされてきた場合、反射的に相手の気持ちや望みを推測し、自分の気持ちを抑えて、それにそぐうように動いてしまうことがよくあるように思うからです。それはいい悪いではなく、そう動いて来ざるを得なかったということに尽きると思います。
一方で、そうすることは自分にかなり負担を強いることであり、とても苦しいことなのではないでしょうか。その苦しさの結果が、Kさんの場合は過呼吸や動悸、落ち着かなさになっているのではないか。
つまり、相手によいように動けないと自分が感じた時や、自分の思う相手の要望に添おうとして自分のがまんの無理がたたった時に、過呼吸や動悸、落ち着かなさが起こっているという共通項があるのかなと感じました。
お父さんの家で夜物音を立てたら父が起きてしまうのではないかと思った時に過呼吸になったというのはその代表的な例ではないでしょうか。過呼吸が長期に続いているというのは、精神交互作用に加え、自分が自分らしくいられない状態にその間置かれ、落ち着かない状態にあるということのように思われます。

誘いを断って自分のしたいことを優先させるというのはKさんにとって今もとても大変なことかもしれません。しかし、そこにKさんの新たな一歩があるように感じます。最終的に断るかどうかはKさん次第です。しかし、断ろうとすると、何が気になるのか、自分が何を恐れているのかをよく見つめてみてください。

そして、もし断ろうとした場合には、これまでのやり方と違うわけですから、罪悪感が湧いて当然です。その場合は、罪悪感を持ちながら断ってみる。こわごわでも相手の誘いを受けず、自分のしたいことを優先してみたときにどんな風に感じるか。相手の掃除や花の手入れをしてみて感じたことがあったように、そこからまた広がっていく生活や感覚があるように思います。
(今村祐子)

「不安を取り除くことよりも、本当に大事にしたいものに目を向ける」 '15.3 

Hさんは、不安が強い時にはそのことで頭が一杯になり、妻との会話も上の空になってしまい、妻が辛い思いをしていることが辛い、どのように自分の思いを切り替えれば良いのか分からないと書き込まれています。ただし、mandyさんも評価しているように、不安が出てもそれに振り回されず行動を続けている姿勢は立派ですね。

不安や気になることがあると、どうしてもその一時は周囲に気が回らなくなってしまうものです。しかし、そのことによって相手がどう感じているかを心配しているHさんは、ご自身が思っているよりも不安に飲み込まれていないように思います。多くの場合は、自分の不安のみに注意が向き、そうした自分の態度にまで気が回らないものです。それだけ奥様を大事に思っているということだと思いますが、そのためには不安を無くさなければ…気分を変えなければ…となってしまうと、逆に自分の状態に意識が向いてしまうので、逆効果かもしれません。気分(思い)の切り替え方を悩んでいるようですが、実際気分はなかなか思い通りに変えられないものでもあります。嫌な気持ちを忘れようとすればするほど、それが心にひっかかってしまうというように・・。

それゆえ、不安などの気分にとらわれてしまった時には、気分を先に変えようとせず、とりあえずそこで出来る行動に手を付けてみると、あとから気分の変化に気づいたりするものです。気分の転換は行動の転換から・・ということですね。会話の最中であれば、行動そのものを変えることは難しいかもしれませんが、そこで出来ることを探る工夫は不可能ではないでしょう。たとえ不安で頭の半分が占められていたとしても、残りの半分の頭(心)で、Hさんなりに奥様の話を聞き、答えてあげる・・・ということです。そんな中途半端なことでは相手を不快にすると思うかもしれません。しかし、折角奥様との会話を大事にしたいと思っているのに、不安で上の空になってしまう自分にHさんが落胆し、目の前にいる奥様との関わりをおざなりにしてしまう方が、相手は辛く感じるかもしれません。自分を万全にすることが相手を大事にすることなのではなく、たとえ万全でなくとも、その時の自分なりに対話をしようとする方が、相手を大事に思う気持ちとして伝わるのではないでしょうか。

もう一つは、相手が本当は何を求め、実際何を辛いと思っているのかを、きちんと聞いてみることも大切でしょう。Hさんは、“自分が不安にとらわれていることで妻が辛い思いをしている”と感じられているようですが、具体的に奥様はどのように思っているのでしょう?自分がどのくらい不安で、とらわれているのか・・・という話ではなく、奥様が実際どのようなことを望み、何を辛いと思っているのかを話し合ってみると、お互いの気持ちがもっと通じ合うのではないでしょうか。それこそが、神経質の生かし方と言えるでしょう。
(久保田幹子)

「何でも森田療法でなく」 '15.2 

Cさんが,意味不明なことを言い始めたため、家族に病院に連れていかれたとのことです。てんかんの診断で薬を頂いたようですが,薬の副作用が強く,未だいろいろな症状で困っているようです。
(難しい話になりますが)てんかんは大脳の神経細胞の過剰発作の結果生じる反復性発作を主徴とする慢性脳疾患です。てんかんの薬は神経細胞の過剰興奮を抑制することで発作を抑制します。
てんかんは脳の疾患、つまり身体の病気と言えますので,まずはてんかんの症状を薬で抑えて,状態を見ながら森田療法の考えを取り入れていくことをお勧めします。「意識も時々飛ぶし忘れやすい」のであれば,主治医の先生に薬について相談された方が良いかと思います。
(矢野勝治)

「不安を味方につけよう」 '15.1 

Sさんは管理職として仕事をされている中、全てのことが上手くいかいないような不安にかられて、手がつかなくなり、それでまた不安になるという悪循環に陥って困っていらっしゃいます。

管理職というプレッシャーのかかるお仕事をされていると、「ちゃんとやりたい」「ちゃんとやらねば」と考えがちで、そのためには「不安を完全に取り除いておかなくては」という気持ちになりやすいものです。不安という感情は私たちにとってあまり喜ばしい感情ではありませんから、取り除きたくなるのも無理がないかもしれません。しかし、不安という感情は元々敵ではありません。不安になるからこそ、不安になったことへの準備や対処ができるものです。そういう意味では不安は私たちにとって必要な感情の一つともいえるでしょう。

Sさんは「不安になることは悪いこと」と捉えていて、それをなんとか「取り除かなくてはならない」という姿勢が強すぎるのかもしれませんね。不安を取り除いてから、行動する、というやり方をしていると、結局手がつかなくなってしまい、ますます不安が大きくなってしまいます。皆さんも実際に今までも「不安だな、嫌だな」と思いながら行動していくことで不安が和らいでいくという体験をされているのではないでしょうか。Sさんは管理職ということで、様々なことに対応されているのだと思います。その様々なことが全て不安になると、どれから手を付けてよいか分からなくなることもあると思います。まずは優先順位をつけて、少しずつでよいから手をつけていってみましょう。手をつけていくことで、感情は変化していくはずです。
(谷井一夫)